DELUSION

デザイン学生が、様々な作品や人物を取り上げ、「作り手目線」で語っています。(映画、音楽、デザイン、漫画、アニメ…etc)

秋元康 と セカンドクリエイター

お久しぶりです。

 

今回は秋元康さんについて。

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秋元康と言えば日本を代表とする作詞家、音楽プロデューサー、放送作家であり、AKB48グループなどのアイドルグループの総合プロデュースも務めています。

 

 

秋元さんは1977年から活動しており、約40年間様々なジャンルでヒットを生み出し続けているのは、常に時代の流れを読み続け、新しい波を起こし続けてきたからだと思います。

 

 

youtu.be

 

この動画でも、その業界での常識や共通認識を破壊したところにピンと来たと言っているように、「芸能活動を本気でやっていることはダサい」「部活感覚で番組に出る」といった新しい概念を生み出すことで、これまで文化や流行、思想を作ってきたんだと思います。

 

 

 

 

AKB48の出現

秋元さんとつんく♂さんを比較してみると、どちらも現役でアイドルプロデュースをしていますが圧倒的に秋元康プロデュースのアイドルが成功を収めています。

 

つんく♂さんはハロープロジェクトを設立し、モーニング娘でアイドルの一時のを築いていますが、現在は当時ほどの勢いはありません。

 

当時、アイドルはその名の通り「偶像」でしかなく、憧れるだけの存在でした。ジャニーズも同じで、追っかけがいるほど、神格化される存在だったと思います。

 

 

その概念を覆したのがAKB48の出現です。

 

「会いに行けるアイドル」という今までのアイドルと真っ向から対立するコンセプトのアイドルを生み出しました。おニャン子クラブの作詞家をしている時は総合プロデュースはしておらず、ただ歌詞を提供しているだけで他のスタッフと同列の扱いだったと言います。

 

それからオタク文化の発信地である秋葉原に劇場を作り、総合プロデュースする環境を作りAKB48を売り込みました。

 

AKB48の構造は凄まじく良く出来ていて、かなり戦略的に作られています。

 

 

 

 

 

セカンドクリエイター

セカンドクリエイターという言葉は芸人で絵本作家の西野亮廣さんが作り出しました。セカンドクリエイターは平たく言えば「協力者」のことで、西野さんは、自身がクラウドファンディングをしている時の支援者をセカンドクリエイターの一種と考えており、「何かを支援することで、自分も参加している」というマインドが働くという現代人の特性がセカンドクリエイターを生み出していると唱えています。

 

AKB48でいうところのセカンドクリエイターはファン。今まではアイドルたちの応援手段は限られていましたが、総選挙という画期的なイベントによってファンは「自分が投票すれば推しの順位が上がる」という直接的に推しに貢献できる方法を手に入れることでアイドルとファンの関係を強固なものにしました。

 

 

 

 

ロングテール

ロングテールという概念があります。

ferret-plus.com

 

ロングテール(the long tail)とは、主にネットにおける販売に置いての現象で、売れ筋のメイン商品の売上よりも、あまり売れないニッチな商品群の売上合計が上回る現象のことです。

 

 

今日、本屋がAmazonの出現によりどんどん潰れていっています。それは、本屋の売り場面積が有限で、Amazonのようなネット販売ではロングテールが起こるため本屋の需要がなくなってきているせいです。

 

 

AKB48は完全にこのロングテールを起こすのに絶好の構造を持っています。AKB48は、選抜メンバーだけでなく研究生まで加えると総勢100人を超えるメンバーが在籍しており、メンバーが数人のグループが本屋なら、AKB48Amazonというように、人気も知名度もそこまでない子でも、数人でもドンピシャのファンがいればロングテールが成り立ち、AKB48全体で見れば大きな貢献になっているというわけです。

 

 

 

 

 

ライバル

「会いに行けるアイドル」というコンセプトのため、地方にも劇場を作り、そこでもたくさんの48グループのメンバーを増やしました。ここでまたロングテールの尻尾を伸ばすわけですが、そこで出てきたの坂道シリーズ。

 

 

AKB48が結成されたのが2005年で、その6年後の2011年、公式ライバルとして乃木坂46が結成されました。AKB48とは違ったコンセプトのアイドルを掲げて売り出しましたが、当時はまだ手探りだったようです。時間をかけて秋元康企画・構成の番組でその活躍や軌跡を追って、乃木坂ブランドを確立して「オシャレ路線アイドル」を根強くしていきました。募集時にもモデルやタレント出身を集めていたそうです。

 

 

メンバーひとりひとりで見るともちろんそうではないですが、グループで見ると欅坂46も番組を持ち、今度は「ボーイッシュ路線アイドル」を確立していくところから見るとAKB48とは全く違った構造を持っています。どちらかというとAKB48はイメージとしてのグループではなく、個々をち強調してるセレクトショップタイプで、坂道シリーズはグループ自体にイメージとしてのコンセプトを持ったオリジナルブランドタイプ

 

 

AKB48は大人数、グループとしての個性はない複合タイプなので、めまぐるしい世代交代に対応しています。完全実力主義で、総選挙によってセンターを決めたりするため、常にファンの求める姿に対応したグループを維持することができるという株式会社に似ている構造があるので、時代に合わせやすく作られています。

 

 

坂道シリーズは完全にグループイメージを確立しているので、2期生を迎え入れたりという人数補正はあるものの、「乃木坂、欅坂の曲やpvが好き」というグループコンセプトにハマってる人は常に離さないようなブランディングを仕掛けています。番組を作ったのも、ほぼ毎回同じメンバーが出るため見たい人が選んで見ることができるという構造を持っているからだと思います。

 

 

 

ラストアイドル

昨年、秋元康企画で始まったラストアイドルの番組は、デビュー曲も振り付けも決まった上で暫定メンバーが毎週挑戦者と入れ替えバトルを行い、暫定メンバーが負ければ即挑戦者と入れ替えという上に、審査員4人のうち、天の声が一人指名して、その審査員の独断でジャッジされるというなんとも過酷な企画です。

 

 

これは過酷な上に審査方法が運に近いものもあるため、毎回審査についてネットが荒れていました。これによってファンは過酷な運命に振り回されたアイドルを自分たちで何とかしなくてはいけないと自分事化します。そして秋元康はこのネットが荒れ、ネットでファンが自分たちが何とかしなくてはならないと感じることを狙っていたのか、ラストアイドルファミリー(ラストアイドルと敗者組で結成されたセカンドユニット)は全員、公式のTwitterのアカウントを持っています。そして番組で誰かが負けたり、自分が敗退したりするとTwitterでその思いを綴り、さらにファンは感情を移入するようになります。

 

 

 

そして、showroomというアイドルやタレントの動画配信に対して投げ銭ができるサービスがあるんですが、そこでもファミリー内で関コレのランウェイを歩く権利をかけた対決も企画され、そこでもファンが必死に推しのメンバーにポイントが入るように動いていました。

 

 

つまり、秋元康は「会いに行けるアイドル」の次の次元として、「ネットで繋がれるアイドル」を生み出したんではないかと思います。

 

 

審査員や番組運営という仮想敵を想定させ、ファンがネットで団結し、アイドルにリプを送ったり、showroomで協力したりしてアイドルを育てるというフェーズに突入している気がしました。

 

 

 

 

 

 

いかがだったでしょうか。

秋元康さんは、常に時代を読み続け、新しいアイドルの概念を生み出すことで、その地位を不動のものものに天才プロデューサーなのだと思わされました。

 

 

 

 

 

秋元康セカンドクリエイター]